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潮騒のひびきをききながら

(前略)ひびきわたる潮騒の中に、私は神のみ心を感じる。

潮騒の底の底の底に、地球を地球たらしめ、宇宙を宇宙たらしめている、生命の根源の力を、私は強く感じている。

潮騒は海の呼吸だ。吐く息、吸う息に、海の生命が働き、そして深い安らぎがある。

大空と、大地と海と、人間世界を育ぐくんでいるこれらの大自然から、人間は何故もっと深い真理を学び取ろうとしないのであろう。只、自己の肉体世界の利用価値としてのみ、この大自然をみつめ、探ろうとする。

人間の生命が、肉体だけのものではなく、大空の中心にあり、海の深い深い底にある、永遠の生命に等しいものであることを、そして、人間はその真性である、雄大な心を自己の心として生きる術のあることを、それが祈りであることを、人間本来の深い呼吸によって、知らねばならないのだ。

私の心は潮騒のひびきをききながら、全く、海の心と同化して、人類完全平和達成の祈りを祈りつづけていたのである。

五井昌久著『神への郷愁』より