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寒椿の花

人の世の憂さ苦しさを我に託して
人々が帰り去った後の凍みつくような厳冬の庭に
そこだけがぱっと華やぎ寒椿の紅(くれない)の花三つ四つ五つ
くれなずまんとする自然のひとときの美しさを一つに集めて我の心に話しかくる
花は美の天使
人は神の分生命(わけいのち)
花はそのまま自己の使命を生かし
人は神の生命を穢(けが)して久し
花のいのちに恥じず生くる人幾許(いくばく)
天の光と地の慈愛に育ぐくみそだちいて
この世に何らの徳も残さず魂(たま)磨きさえおろそかに去りゆく
人の多きこと嘆き給うは神のみならず
万物ひとえに嘆くなり
大自然の心花にうつり
花の心我に訴うる
我は花の心に融け合いて人類の業(カルマ)消滅の祈りを捧ぐる
世界人類が平和でありますように
すべての天命が完うされますように
この時大光明聖ヶ丘をつつみ
寒風膚に快(こころよ)し寒椿の妖精微笑して立つ

五井昌久著『純白―五井昌久詩集』より