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眸(ひとみ)

鏡の中に私の眸がある
それはすでに私の眸であって私のものではない

その眸は深い神秘をひめてじつと私をみつめる
その眸の中に私のこれからの仕事が蔵され
私の進んでゆく道が印されている

その眸のあるところは空の先の世界
空即是色と展けている世界
その中に私の肉体は融け去り
私の天命だけが光りはじめる

その眸は私に連なる多くの人々の生活を照しはじめ
人の世に直なる生命を輝かそうとする
その眸の中にはキリストも仏陀も住まい
私に倚りくる祖先の顔々もうつる
その中で時には笑まい時には嘆く
幾多のみ魂のある事もあなた方には知らせたい

その眸の見つむるところ柔和なる笑顔が呼び起され
その瞳の光るところ天使の働きも自由無礙となる
その眸はやがて地球世界の闇をとかし
人々の眸にそれぞれの神を光らすのである

鏡の中に私の眸がある
それはすでに私の眸であって私のものではない

五井昌久著『いのり―詩集』より