(前略)ある一部の宗教家は、人間業生説、因縁説を説き、人間は常に因縁因果の世界から抜け切れぬとしているが、私はここではっきりと、人間は本来業生ではないと言い切りたい。
業生である以上、人間はいつ迄も輪廻転生しなければならぬし、苦楽混合、否苦多く、楽少なき生活をつづけなければならぬことになり、一向に救われぬことになってしまう。
これでは人間として生まれてきたことがまことに不幸であり、神とか仏とかの存在価値がなくなってしまう。
現象の世界は確かに因縁因果で動いているようだが、その底を流れている強い神への憧れ、仏への思慕を思うとき、人間の本性の中に明るい光明をみないわけにはいかない。
私は人間の霊性を深く追求して、人間と神との一体を観じ得た。
即ち人間は神の子であり、神そのものでさえあるということである。
私が霊覚で悟り得た人間の発生について説いてみたいと思う。(つづく)
五井昌久著『神と人間』より