地球は永い間黙って
大地と云ふ自分の皮膚の上で
勝手気ままに荒れ回ってゐる
肉体人間と云ふ幼い生物をみつめてゐた
其の昔天空からの依頼で天体の分身なる小さな光の魂をあづかり
天地協力して創りあげた二つの生き物
それが肉体人間の女と男であつた
彼等は次第に種族を殖やし
地球の王のごとく自らふるまひ
地球先住の魚類鳥類動植物を
やがて自己等の膝下に組敷き
彼等同士も戦ひつゞけ
大地を傷つけ 海を荒した
地球は彼等の無謀をこらへかね
おまへたちを創つたのは
天体とこのわしなのだと
時折り大声に叫んだ
すると忽ち風雨が起り
大地が烈しく振動して
山が崩れ 海がさかまいた
其の時彼等は畏怖し狂気し
必死に何かにすがらうとした
かうした手痛い地球の説法に
自己が天体の分身で
天体と地球霊身の協力によつて育てられてきたものである事を
彼等の中から悟るものが少しずつ出来てきた
彼等は地球を礼拝し
天のみ親を呼びつゞけ
遂ひには本体と一つになり
地球世界に光明を放ち
聖者だ仏陀だと云はれはじめた
然かし 覚者はいつか天に還へり住み
地球世界に残り住む者は
常に幼い肉体人間 迷妄深い人間共であつた
彼等は自我欲心のとりことなり
形あるものすべてを破壊する
悪魔の武器をつかひはじめた
地球は遂ひにこらへかね
天に向つて談合した
― 私の体を大きく震って、私の上の厄介者たちをふるひ落としてもよからうか、さうしてもう一度異なる形で人間を創り直さう ―
天空はその言葉をうけて
― もう一時刻待って貰ひたい、
こちらの世界から光の救援隊を送りつゞけてゐるのだから
それに今こそ其の中心の大光明を天降らせるところだから ―
天地の話が妥結して
天体から今や人類救世の大光明が天降ると云ふ
天と地の秘め事の一節
五井昌久著『ひゞき』より