(前略)宗教がなかなかこの世を開いてゆかなかった一番の原因は何かというと、天の理想をあまりにも地の現実を無視して、現わそうとしたことなのです。
天の理想を地の現実にそのまま降ろしたのが、空になれとか無為になれとかの言葉なのです。
出来ないことを出来るようにするということは、これは無理なことで、その地の現実を無視しては、宗教が成り立たないわけです。
誰でもが出来るという教えをしなくては、いつまで経っても人類は空になれないのです。
人間は神の分生命であるという真理を現実に現わすのに、どうしても人間を一段一段昇らせる梯子が必要なわけです。
それが消えてゆく姿なのです。(後略)
五井昌久著『白光誌1967年10月号』より