(前略)
不動明王がいかめしい顔をして、背中に火を背負い、手に剣をもって立っている姿は、すべて業因縁、迷いの想念を断ち切る心の状態を現わしているのです。
いかめしく厳しい顔は、業想念を睨みつけている本心の姿であり、背負っている火は、煩悩を焼き尽くす光明であり、手にもつ剣は、迷いの想念を切り払う降魔の利剣なのです。
観世音菩薩を慈悲心の現われの姿とすれば、不動明王は、峻厳なる本心開発の姿であるのです。
業因縁の側から見れば恐ろしく、厳しい身震いが出るような姿に見えるわけです。
(後略)
五井昌久著『白光への道』より