(つづき)肉体の人間では、自分の身内のほうが他人の身よりかわいいんだから、宗教家がどう言おうと、私の子供のほうがかわいいんだ、私の妻がかわいいんだ、私の弟がかわいいんだ、ということになります。
そうすると理想というものは、この世界では、肉体の人間の頭では成就しないんです。
他の国より自分の国のほうがかわいい。
自分の国より他の国をかわいがって、他の国のことばかりやっていれば、自分の国はつぶれてしまいます。
だから肉体としては、自分の国を守り、自分の家は自分が守るように出来ています。
だから肉体としては、いつも相対的なんです。
いつも相手があるんです。
相手と自分といつも競争をしなければならない。
自分の国と他の国とがいつも競争をしている。
だから肉体の人間の頭では、自分の一家と他人を区別するから平等の愛にはならないのです、絶対に……。
日本人が日本をアメリカより愛するのは当たり前でしょ。
それを理想としては、日本のごとくアメリカを愛さなければならない、と思うかもしれないけれど、実際には出来やしない。
それを私はよくわかっているのです。
そこで天と地を、天の理想を、地の現実に結ぶ方法を考えているのです。(つづく)
五井昌久著『空即是色―般若心経の世界』より