「相手の顔が見えないのだから、ふだんよりも、もっとやさしく、明るく、丁寧に電話はかけなさい。」
「さよなら、とお話が終わっても、相手が受話器をおろしたな、と確認するぐらいの余裕をもって、受話器をおきなさい。」
「受話器はやさしく、静かにおくんだよ。ガチャンと放り出すような、叩きつけるようなおき方をしちゃいけないよ。相手は何かと思うよ。それまでのやさしい慰めの言葉も、その音で帳消しになってしまうからね。」
「断りの電話をかけるときは、受話器の向こうの人に頭をさげるつもりで、特に語気はやわらかく、突っけんどんに、冷たくならないように。相手の気持を充分考えてあげてね。」
高橋英雄著『師に傚(なら)う』より