「先生、わたくし行がしたいのです」四十才がらみの婦人がいった。
「何故だね?」
「霊能を得たいからです」
「霊能を得るために宗教には入るのならお止めなさい。私は本心(神性)開発をまず第一番の仕事としているのですから、おかど違いだ」
「いえ、先生、私は変な霊能がほしいわけじゃないんです。先生のような立派な方について学べば、本当のものが得られると思って……・」
「どんな理由にせよ、霊能がほしい、欲しいと思って行をすることは止めなさい。霊能を得たいと欲するのは、自我欲望の変形です。まず、本心を開発することです。神さまがあなたの本心開発に必要だと思われれば、霊能は授けられるだろうし、不必要と認められれば与えられないだろう。まず、自分の感情、人の感情に把われなくなることの訓練をすることです」
高橋英雄編著『続・如是我聞―五井先生の言葉』より